JEPX分析 売電単価 長期上昇トレンド 卒FIT市場が3倍値を維持するのか

徒然

今回はオタク記事です。

卒FIT後に期待されるJEPX(余剰電力取引市場)の売電単価が当初の想定価格(6~8円/Kw)から3倍値を長期的に維持しています。

単価3倍=売上3倍=利益も3倍 → 事業のバリュエーション(株価)が3倍

そんな状況になっています。

さて、これが続くのか!

オタク分析を始めます。

本日の記事

  1. JEPX余剰電力取引市場とは
  2. 売電単価の長期トレンド
  3. 入札板の分析
  4. 今後の予測

この記事からわかること

卒FIT後に期待される余剰電力取引市場での売電単価が20円/Kw以上を維持する見込みであることがわかります。これは多くのFIT事業者にとって想定売上・利益が3倍になる話です。もっと言うと、株価とは将来稼ぎ出す利益(期待)を現在価値に置きなおしたものなので、株価が3倍になったともいえます。

この記事を書いているなぎささんは

2020年1月から宮崎県と兵庫県に総額4600万円の太陽光の事業投資をしています。

また、趣味の世界で仮想通貨をしており、オークション原理や板分析が大好きです。

この二つの趣味を掛け合わせて、今回JEPXを分析します。

JEPX余剰電力取引市場とは

一言で説明すると、

余剰電力を取引する市場です

多くの人(企業)は関西電力や九州電力など、「発電会社」から電気を購入しています。

この発電会社が需要に対して供給量を確保できなくなったとき、このJEPXで「買い入札」が入ります。

逆に、この発電会社が需要に対して電力が余るとき、「売り入札」をします。

両社の間で需給がマッチすれば、入札が「約定」し、余剰電力の取引が成立します。

このように、余剰電力を売り買いしている市場がJEPXです。

2016年の電力自由化

この従来の仕組みに加え、電力自由化に伴い多くの会社がこの取引市場に参入してきました。

従来であれば、「発電」、「送電」、「売電」、これが3点セットでしないと電力事業ができませんでした。

しかし、電力自由化以降はこの3つが自由になり、発電能力がない会社(ソフトバンクとか)でも、電力の仕入さえできれば、販売できるようになりました。

電気は在庫ができないが、輸送は瞬時

電気というものを考えるとき、次の二つは電気にしかない特殊性です。

「在庫ができない」

「輸送が瞬時」

電力自由化以降、電力の需要と供給差は至る所で起こり、それを瞬時に解決する仕組み、すなわち、JEPX余剰電力取引市場が重要性を増すようになりました。

JEPXの市場規模は爆増中

JEPXは日本最大の成長市場

これ以上に成長速度を見込める市場って、この日本に他にあるでしょうか?

昨年の市場規模は4.6兆円ですが、今年の8月(8か月分)には既に昨年の規模(12か月分)を超えています。

これが売電市場に身を置く醍醐味です。FITとよく比較される不動産にはこんな未来はありません!

売電単価の長期トレンド

市場規模=約定総量*単価

一つ前に示した「市場規模」とは上記数式で示すことができます。

約定総量と単価の推移を見ると、市場成長が約定総量の増加によるものとわかります。

約定総量は2008年(リーマンショック)と2011年(東北大震災)の時に前年割れをしていますが、全体平行として伸び続けています。

約定量=売り注文と買い注文

約定量が伸びる理由は売り注文と買い注文の増加です。

いわゆる「板が厚く」なったわけです。

売り注文に対して、買い注文と約定量が増加

入札状況を売りと買いで比較すると、全体傾向として買い注文が増えています。

2013~2017年までは圧倒的に売り注文が多く、買い手はいませんでした。

それが2016年の電力自由化以降、発電と送電ができなくても、仕入ができれば販売ができるという環境になりました。電力業者の数とともに余剰電力を買いたい企業(需要)が増えてきました。

新電力会社の倒産が昨今騒がれていますが、それでも買い注文の量は売り注文に対してずっと増加中です。

売りと買いのバランス

一見変動に規則性のない単価ですが、「(売り注文)ー(買い注文)」=「買い注文の強さ」と比較すると相関性が見て取れます。上の表は単価と入札状況の推移で、その下に「(売り注文)ー(買い注文)」を示しています。

買い注文が相対的に増えると単価は上がり、逆もしかりです。

買い入札残は0%、約定残は20%に収束

同様の方法で、売り注文を分母に、買い注文の強さと約定残を見てみます。

すると、売り注文に対する売れ残りはほとんどなく、逆に売り以上に買い注文があるときもあるようです。

また、買い注文の増加に伴い、長期トレンドとして約定残が減少傾向であることがわかります。

長期トレンドをおさらい

  • JEPXの市場規模は爆増中
  • 原因は入札量と約定量の増加
  • 買い注文の相対的増加により、単価UP中
  • 約定残(売残り)はずっと減少傾向

入札板の分析

さて、長期トレンドを抑えたところで、単月推移と何個か極端な事例を見てみます。

単月推移

左側の横棒グラフは月足で単価(最安値 平均値 最高値)。

右側の横棒グラフは買い注文の強さ(売りー買い)と約定残を示しています。

中期トレンドの確認

これを見ると、単価と入札板の相関性がよくわかります。

2021年1月など、極端に買い入札が強い時には63円まで上がっています。

余談ですが、この時期JEPXの高騰に恐れおののき、節電目的で冷蔵庫をOFFにしようとして妻と揉めました・・・(関連記事

一方、2020年5月など、コロナショックと空調不要の時期が重なると、買い入札は減り、4円まで下がっています。

全体の単価推移を見ると12円が平均値ですが、買い注文が強くなる傾向にあるので、それよりは上がりそうです。

今年の最高値 2022/8/3

この日は東北と東京で200円を6時間近く維持しました。

値上りの原因

  • 24時間ずっと、売り注文より買い注文が多かったこと。(売:買=45:55)
  • 約定余力が6%と、長期トレンドライン20%と大幅に下回ったこと。

市場ブロック

一方、九州はそこまでは値上りせず、北陸、中部、関西、中国、四国は同じような値動きをしました。

これは西日本と東日本で電力周波数が違うため電力融通に制限があることと、送電系統で市場にブロックがあることが原因だと思います。

今年の最安値 2022/5/8

値上りの原因

  • 3〜16時の間ずっと買い圧力がなく、単価ゼロ。(売:買=58:42)
  • 約定余力が34%と、長期トレンドライン20%と大幅に上回ったこと。

5月は上記の月足チャート3年分からも分かるように、最も電力需要がない月です。冷暖房が不要な時期であることと、製造業など電力消費の主要産業が連休なのが原因です。太陽光発電をしているみからすると、供給過剰により出力抑制を受ける時期でもあります。日照時間がピークで雨も少ないこの月は本来稼ぎがしらなのですが、ここ3年間に関してはコロナによる一般消費市場の冷え込みも重なりました。いわゆる3重苦。

コロナが落ち着けばもう少し5月の書い入札は増えるでしょう。13時間ゼロ円は酷すぎる。

九州は電力単価が安いが、本州連携で解決見込み

何件かエリア毎の売電単価を見ましたが、九州にはファンダメンタル的に安値傾向です。

これは恐らく余剰電力市場の送電網が本州と連携されていないからでしょう。

これから勉強する課題ですが、OCTTO(電力広域的運営推進機関)が「中国九州間連系線(中国向)運用容量拡大策の検討について」という議事録を2021年6月に出しているので、進展を祈ります。

おさらい

テクニカル分析では、

  • 売り入札と買い入札の強さで電力単価が決まっている。
  • 約定総量=入札量は一貫して増加傾向。
  • 約定残=(売りー約定)/売りを見ると20%をトレンドラインに収束傾向。
  • 買い入札が売り入札を超える事態が増えている。

つまり、長期的な値上り傾向。

ファンダメンタル的には

  • 九州は安値。今後の本州連携を調査必要。
  • 5月は安値傾向。夏場と冬場は高値傾向。

あと、原発の稼働状況や電気予報との相関性は分析できていないので、今後の課題。

今後の予測

テクニカル分析を見ても、ファンダメンタル分析を見ても、長期予測は正直微妙です。

ただ、堅い話として、

  • JEPX市場の成長
  • 入札量と約定量の増加
  • 買い圧力>売り圧力がチョコチョコ発生
  • 電力には在庫概念がないため、値段が跳ね上がりやすい性質

これらを加味すると、余剰電力には資産としての「流動性=(換金性)」がどんどん高まる傾向であり、結果として資産価値UPは期待できると思います。将来的にはエネルギー銘柄の株や先物取引みたになるのでしょう。