来月ヒマラヤ4000メートルに挑む両親へ  私の登山経験を伝えます。

インド経験 家族 徒然

突拍子もない記事ですか、来月両親がヒマラヤに登ります。年は2人とも70代。

さて、生きて帰ってこれるのか…

本日の記事

  1. 今両親が挑戦しようとしていること
  2. 過去に同じ高さに到達した私の記憶と助言
  3. 命懸けの両親に思うこと

この記事からわかること

もう帰らぬかも知れぬ両親を送り出す長男の気持ちがわかります。

この記事の想定読者

  • 同行者
  • 私の過去の登山仲間

この記事を書いているなぎささんは

2006年8月にヒマラヤ4000メートルまで登山した経験があります。その時は父のヒマラヤ登山ツアーの付添バイトでした。

当時の体力面の話をすると、古式泳法山内流の師範免許(=大分県の無形文化財継承者)を持ち、潜水に関しては流派きっての記録がありました。肺活量の面では敵なし!(関連記事)

その他、大学ではヨガサークルを作り、150名近くの生徒がおり、なんと言っても19歳という若さがありました。

この肺活量と行動力の化け物が、高山病で死にそうなバカ者になっていました。

自称の強さは神の前では無でした…

 今両親が挑戦しようとしていること

さて、生還を祝うために、どんどんハードルを上げていきます!

父は人を巻き込むのが好きな性格。

今回しようとしていることは、毎度のごとく集団行動で、父はそのリーダーです。

目立つ才能と笑顔で人を巻き込む様子はまるでルフィーです。

母は父親に最も巻き込まれた人

巻き込まれた母親は大変でしょう。

私は19歳の時にヒマラヤ登山に巻き込まれました。そんな話を知らずインドに着き、父と現地集合をしてから聞かされました。おかげさまで装備は通学鞄といつもの靴でした笑

私の話はさておき、巻き込まれる側はジェットコースターです。インドというだけで波瀾万丈なのに、そのインド人がハラハラしていたので、母はスゴイです。

吊り橋効果…

恐らく同行者は20〜30名

このビックリは母でなくても、こんだけの人数がいれば、色々起きます。

父親の旅行業のバイトをしたことがあるのでわかります。やれ相部屋がヤダの、飯が合わないだの、ペースが合わないだの。

そんな余裕はすぐになくなります。

ちゃんとみんな無事で帰れるかな…(マジで心配)

団体旅行で目指すはヒマラヤ4,000メートル

私が登った時はインドとネパールと中国の国境でした。軍事キャンプにお邪魔させてもらったのが思い出です。

ヒマラヤはインドの北側全部を覆うようにそびえており、いろんな国との国境になっています。今回登るのは峰違いの中国国境付近らしいです。

エベレストが8,000メートルだから4,000メートルは低いかと言えば、そんなことはありません。体力と若さと行動力のあった私でさえ、高山病で死にかけました。

初めて行く場所

父も母もはかれこれ40年間、毎年インドに行っています。それでも今回の目的地は初めてで、しかも4,000メートル級です。

初めての場所だと、休憩スポットの間隔とか道中の慣れがありません。

私の時は何年も2,000メートルくらいまで通い詰めてからの4,000メートルでした。

いきなり感がスゴイです。

ロバで最後まで行けるらしいが…

イケる!との判断根拠は舗装の良さとロバの足があることらしいです。

でも、前回一緒に登った時は父は落馬死しかけていたので、心配はあります。

ま、止めても効くわけないので、背中を押したいですが。

ヒマラヤで亡くなるとして、ヨガ教師の人生としてはカッコイイですが、旅行業者としては責任が重いです。

過去に同じ高さに到達した私の記憶と助言

さて、生還を祝うために、更にハードルを上げていきます!

高山病の苦い記憶

さてさて、肺活量と行動力と若さに満ちた私でさえ、当時は高山病に悩みました。

あれから若干20年。
父も、母も、同行者も
皆んな大丈夫?

高山病とは

気圧の低さが原因でなります。

逆に下山すれば即治ります。

体験としては100メートル走と潜水を同時にこなしたような感じです。

毛細血管の隅々まで血流音が聞こえ、息苦しく、疲れに足が重くなります。

しゃがんで頭を低くするとたちまち楽になります。寝転ぶと更に。下山すると一歩毎に回復します。

関連情報 厚生省

高山病になる人の特徴

傾向がないのが困るところです。

当日一緒に登った仲間には手術直後でICU出たての60代女性がいました。その人は意外にも無事。なぜ?

自衛隊上がりのヨガ教師がいましたが、その人は若干。逆に!

圧倒的若さと肺活量を誇る私は瀕死。大穴!

現地のポーターは脅威の裸足でドラム缶ほどの荷物をスキップしながら登っていました。チャイ休憩にはダンスの余裕…一見ガリガリのコジキです。

山を前に、若さも体力も職歴も肉付きも区別なく、神の選抜が突如来ます。

ヒマラヤでは…

水は日照時間のみ存在し、普段は氷。

曇れば低気圧で会話ができなくなります。

雨が降れば軍隊が通る車道も含めて土砂災害。

もちろん高山病含め、一切の医療はありません。

体力より気力

登山は一見集団行動のように見えますが、実は個人の精神力との戦いです。

足が棒になるほど歩く経験は誰しもあると思います。

次座ったらもう立てない。このような悩みを何度も繰り返しますうちに、それが一歩一歩の悩みとなり、リズムを崩すともう終わると感じるようになります。

念仏が歩を進める

一歩、あと一歩。このリズムがいつしか念仏に化け、精神力を支えます。

これをマントラと言います。

高山病で心臓音が頭蓋骨の先まで鳴り響きながら、マントラだけを力に登山ていると、小太鼓叩いて平和行脚するどこぞの日蓮宗の起源が分かります。体力より気力の世界です。

現地人はスキップだが、もう怖くてできません

こんな厳しい道を現地人はなんとスキップで登っていました。スキップといってもただのスキップではありません。

足元はスリッパです!

しかも左右の違うスリッパ!!

そんな危ない奴がドラム缶ほどの荷物持ち、崖っぷちで自分の先頭に立っているのです。

もしつかむ石を間違えたら。

もしあのスリッパの鼻輪が切れたら。

下の何十人もの人が雪崩死にします。

実際、何度か落ちてくる物を避けました。

その時は運良くみんなが…

命懸けの両親に思うこと

さて、生還を祝うために、最後は祈ります。
挑戦する姿はカッコ良く、死に場所にも的確

父は引率者

恐らく本人は自分を巡礼者と思っています。

たぶん着いてく人もそう思っています。
インドなのでありがたいことに周りも温かく支えてくれます。

でも一度日本に帰れば旅行業者です。

死人が出ると動揺するのでせめて死亡保険を!

正直、死人が出てもおかしくないです。これはマジ!

研修医の従兄弟から聞いた体験談です。

夜間救急は一刻を争う患者が運ばれ、研修医が必死の対応をします。

現場判断で腕を切り、命を救い。
足を切除して、命をつなぎ。
その人の職業を殺してでも、命を優先する。

薬より時にはノコギリの世界!

ヒマラヤには医療も余裕はないので、こんな粗治療さえできません。

何かがないよう祈るのみ。

掛け捨ての生命保険が唯一の真心でしょう。

誰が遺族になっても、その人は巡礼を理解しない日本の一般人で、父は旅行業者です。

諦めは大切 チャイでも飲んで楽しく

明るい話に話題を変えます。

ヒマラヤを登っていると、ここでもか!というくらい、ありえない極地でチャイが出ます。

ここには絶対に砂糖なんかない!茶っぱも牛乳も火も水も。でもそうまでして誰が持参して振る舞うチャイにはどこか笑いがあります。

怖いもの知らずの現地ポーターはつまらぬインドギャグで楽しんでいます。

そんな人々の日常がこんな極地にもあるのかと。
さすが人の森インドだと。

足が立たなくなれば、そこが楽しい引き時です。

死に急ぐより、帰宅して楽しい家庭の続きを

帰国して自宅に帰ると日常のありが身にしみます。

自分には自分の日常が、現地ポーターには現地ポーターの日常が。

そんな日常が愛おしく、いいのです。

生きて帰れればまた何度でも高みを目指せます。