事業初年度の要 素人でも、税理士なしで、自力で消費税還付の手続きは可能か?
事業初年度の要 素人でも、税理士なしで、自力で消費税還付の手続きは可能か?
- 消費税といえば、課税売上が1000万円以上ある人が限定=通常は無縁
- 課税、非課税、不課税、軽減税率、過去の税率 複雑・・・
- 税理士に頼むと20万円はとられる専門的な税務申告
あえて難しい話をかきましたが、知識ゼロの素人でもできるのか。このあたりのことを書いていきたいとおもいます。
本日の記事
- 素人でも税理士なしでできる理由
- 絶対重要な準備3選
- それでもオススメしない理由
- ベストシナリオ
この記事からわかること
素人でも消費税還付処理ができることが分かります。
その準備と実際の手続きも教えます。
その上で、結局なぜプロにたよるべきかと、総合的にみたベストシナリオをお伝えします。
基本的に、1年半前の自分に向けて書いています。
この記事を書いているなぎささんは
2020年1月に太陽光の売電事業を「個人」として始めました。
1月と個人。この二つの理由から、消費税の税務申告までまる1年間の時間が与えられました。
通常であれば税理士に頼るものですが、勉強も副業の大きな目的の一つだったので、自力でやりきりました。
勉強は当たり前ですが、本当にやり切れるか、かなり心配でした。なんせ、書類1枚で400万円の仕事です。
1.素人でも税理士なしで、できる理由4選
結論、素人でもできます。その理由を4つお伝えします。
✓理由#1 実際に素人のなぎささんでもできたから
ちょっとだけ、無駄ツイートの引用にお付き合いください。素人でもできる証拠です。
素人、とは書きましたが、ビギナーズラックで、プロより早くて、無駄なしです。
老舗税理士の鉛筆作業より、素人のデジタル処理の方が勝ってしまう一例です。
消費税の還付申請完了!しかも、自力で!税理士なしで!
社会人になってから学んだことの全てを総動員した集大成です。今 感動で目頭があつい。
・税金の還付が約400万円
・今年の所得税と住民税がなし
・一般的な学資保険の積立分を15年先取り
・あとは仮想通貨と米国株で資産運用 pic.twitter.com/x6LvZ1VyLF— なぎささん 太陽光と不動産で夫婦3馬力を狙う (@nagisasan1234) March 9, 2021
消費税の還付は今のところ順調!
eTAXで申請したので、進捗状況がリアルタイムで更新されて、安心感がある。昨日は振込先口座の確認が終わりました。 pic.twitter.com/DWhLsnfKtE— なぎささん 太陽光と不動産で夫婦3馬力を狙う (@nagisasan1234) March 13, 2021
消費税還付金キター!!!!
待つこと1ヶ月、明後日振込予定です。
税務調査なし!
平均(=プロ)より2週間前倒し!
税理士に頼らず100%自力!今、2年間勉強してきたことの成果が実りつつあります。生きててよかった😭 pic.twitter.com/evQrEMz3rD
— なぎささん 太陽光と不動産で夫婦3馬力を狙う (@nagisasan1234) April 6, 2021
✓理由#2 サラリーマンだから疎いだけで、自営業では当たり前
複雑な話をすればいくらでもですが、結局近所のメシ屋でもすべて自前でやっているわけです。
素人でも自力でできるはず。制度設計をする人が絶対考えていることでもありますし、この世の事実です。
サラリーマンだから疎いだけです。「税金だから財務部」「税金だから税理士CK!」
こんな押し付け思考はサラリーマンだからです。世間の自営業は自分のこととして、当たり前にしています。
✓理由#3 税務「交渉」ではなく、「手続き」だから
税務処理には「交渉」と「手続き」の2パターンがあります。消費税還付は手続きです。
前者は、解釈論だったり、前例がなかったり、社長の決断次第だったりです。
実際、事業所得と雑所得の境目は曖昧です。税務署に聞いても、「本人の決断です」といわれます。
そのとおりを信じて都合よく解釈すると、裁判で決めることになりかねません。(過去記事)
これと対照的に、「手続き」であれば、処理に答えがあります。疑問があれば、問合せ先があり、答えてくれる人もいます。実例も、アドバイスも、ソフトも充実しています。なんなら、試しに個人でやってみて、最悪プロに修正申告を頼むのも手です。コロナで税務申告には猶予ができています。
✓理由#4 会計ソフトが充実
根性論とは別に、会計ソフトが充実しています。
私はfreeeという会計ソフト(有料版)を使っています。
その時期が来れば、ボタンを押しているうちに書類が出来上がります。処理を簡単にするというのは、今の時代、すごく需要のあることです。今後もっと簡単にいろんなことができるようになると思います。
一つだけ難点をいえば、国税庁やマイナンバーとの連携が悪いです。至るところで少しずつ対象のOSとブラウザーにセンスがないです。例えば、マイクロソフト社が「セキュリティー問題で使うな!」と警告を鳴らし、更新STOPしたもの(Internet Explorer)が未だに現役です。かたや、Googleは至るところでストップがかかります。やっきになって、紙と鉛筆に切換えると、その瞬間仕事は終わります。日本は古いものリスペクトがスゴいです。パソコンを買うならWindowsにすべきです。eTAXはめげずに頑張りましょう。ちなみに、私はMacとeTAXでやり切りました。この方が、申請後のスピードUPとリアルタイムの状況更新があります。
2.絶対重要な準備3選
全ては準備ありきです。ここを読み飛ばす人は、税理士に任せましょう。
✓必須提出書類3選
この書類は税理士に任せたとしても、結局は自分で書くことになります。誤って提出を忘れると、後でプロに泣きついても修正がききません。この記事は太陽光事業者に偏った内容ですが、それにかかわらず、この書類は必見です。消費税の対象となる事業であれば、この届出をすることで、支払った消費税還付の申告ができます。病院や住居用不動産は残念ながら無理ですが(過去記事)、それ以外の「設備を伴う事業」であれば、初年度の節税対策になります。レストランなら、厨房設備とか。
ただ、デメリットをあげると、一度消費税の還付申告をすると、課税売上が1000万円未満でも、2年間は消費税を納めないといけません。本来ならば、100万円の売上に対して、10万円の消費税はもらってもいい話です。これに納税義務が生じるので、利益率は悪くなります。そのバランスは計算しましょう。結局、消費税還付の旨味は設備産業特有かもしれません。太陽光事業の仕組みはこちらの記事を読んでください。
✓会計ソフトの準備
freeeがおすすめです。その他の会計ソフトでも対応可能ですが、最低限、下記要件を満たしたものを選びましょう。ないと無理です。あれば、素人でもなんとかなります。
- 固定資産台帳の機能
- 仕分けのバッチインプット
- 税抜き会計
#固定資産台帳の機能
消費税還付を受けるためには、その前段階に当たる所得税の確定申告で、決算資料(PL+BS)の提出が必要です。
また、消費税の還付とは、高額な固定資産の購入ありきの話だと思います。固定資産を持ってしまう以上、固定資産台帳がないと、「減価償却費の計算」ができず、PLもBSも作れません。この二つの理由から、固定資産台帳の機能が必要です。
ちなみに、なぎささんは前職でこの帳簿管理を「本職」としてしていました。
#仕分けのバッチインプット
決算書=PL+BS。これを正しく作ろうとすると、借入の「金利と元金」の扱いにぶち当たります。
PLでは金利は扱いますが、元金の返済は扱いません。
BSでは元金の返済は扱いますが、金利はPLを通して間接的にしか扱いません。
金融機関のネット連携する機能だけでは、この2つが一色単に「引落」になってしまい、仕分けが必要です。しかも、借入返済計画表を見ると、毎月ちょっとずつ金利と元金のバランスが違うので、大変です。毎月指定日に引き落とされる「銀行引落」を1円単位で、「金利と元金」に分けるためには、完済までの予定仕分けをバッチインプットするしかないです。
また、税務を超えて、企業会計としてのBSを作ろうと思うと、「長短振替」も必要です。
会計の原則として、1年以内に現金化する予定のものは「短期(流動)」、1年を超えて保有するものは「長期(固定)」として、別扱いになります。ざっくり1億円借金があったとして、それを毎月1年以内の返済予定(=短期)と1年以上の返済予定(=長期)とに分けなければいけません。この作業を丁寧にしようとすると、またもバッチインプットにすがります。
#税抜き会計
消費税の申告をする以上、消費税と本体価格を別々に管理が必要です。
当たり前の話かもしれませんが、かなり大変です。
課税、非課税、不課税、軽減税率。馴染みがないと、呪文ですが、この仕分けが全てのデータに求められます。8%とか10%とかちゃんと書かれていればいいのですが、行政が発行する領収書でさえ、その記載がないことがあります。その都度、手にした領収書の素性と扱いをググる作業です。
なので、素人が扱うには、AIの実装が不可欠です。freeeでは、AIが支払額から消費税を自動算出してくれたり、領収書のスマホスキャンから自動仕分けをしてくれます。困ったときには、Q&Aやヘルプデスクも充実しています。
また、消費税の算出方法には上記のような税抜き会計とは別に、簡易計算ができる方法も選択されています。国税庁が用意した「みなしレート」を使う方法です。では、どちらが特か。初年度はそんな悩みとの戦いです。「初期設定の変更で、一斉切替え」できれば、かなり心強いです。いろいろいじれることが、1番の勉強です。
✓プロの話を聞く オススメYouTube
さて、いろいろ書きましたが、私は素人です。
ちゃんとプロに聞いて、しっかり理解をした上で、挑みましょう。消費税の還付は太陽光に限った話ではありません。知識があれば、いざ事業をしようとしたときに資金繰りを助けます。ここでは簡単に私がお世話になった動画を共有します。
3.それでもオススメしない理由
ここまで、いっぱい書いてきましたが、実は個人での消費税還付はオススメしません。その理由は次の3点です。
✓オススメしない理由#1 失敗リスク
失敗リスクを考えると、税理士費用20万円はなんでもありません。
投資額の10%が戻る話です。私の場合であれば、46百万円の投資に対して、400万円も戻る話です。確実に取り返すためには如何なるリスクも侵したくありません。これが普通の感情です。私の場合は、「勉強」も目的の一つだったのでこだわりましたが、日本人ならゼロリスク信仰で、プロに任せてください。
✓オススメしない理由#2 準備時間
また、私のように丸々1年間も準備期間があることは稀です。
私はたまたま1月に始めたのでこうなりましたが、みんながそうなるわけではありません。確かに、12月は多いです(過去記事)。でも太陽光にとらわれなければ、「事業を始める月」はチャンスがものをいいます。大切な処理を短時間でしてミスるのが一番危ないです。時間がないこと前提にプロに頼みましょう。
✔︎オススメしない理由#3 還付金の受取りを早める
還付金なので、「過払いが戻る」という意味です。戻りが遅いと、それだけ機会損失になります。
設備産業は一般的に借入が大きく、毎月の必要資金も大きくなります。お金が手元にあるとないではメンタルが違います。下手に返済のための借入を作ってしまうと、体質改善が大変です。少しでも早く還付金を手にするためには、始める前からプロとの付き合いが必要です。
4.ベストシナリオ
では何がベストシナリオなのか。
✓ベストシナリオ#1 法人でスタートし、単月決算
法人でスタートすれば、決算日を自由に決められます。つまり、設備の購入日or初売上日に決算をクローズできます。そうすることで、還付金は最大1年間前倒しで手に入ります。節税効果も課税売上が圧縮でき、最大化します。
個人の場合だと、12月31日の決算日をずらせません。仮にも1月に始めたとして、1~12月までの12ヶ月分の消費税の支払い義務が生じます。還付金が戻るといっても、この納税義務との相殺で効果は薄まります。手持ち現金が1年も先送りになると、メンタル面でも不安を抱えます。
起業、借入、決済、決算、申告、還付。
この流れを最短で歩ことがベストシナリオです。
払う消費税を思えば、プロにすがる方が、人脈もできて、二重に美味しいです。
(こうしたかった!!!)
余談ですが、平凡なサラリーマンの場合、親族には理解されないことが多いと思います。過去に戻れるなら、是が非でも「強行突破」を助言します。この反省をモチベーションに、私は「自力申告」にこだわりました。
✓ベストシナリオ#2 経費の幅
法人という財布を持てば、経費処理の旨味を吸えます。
例えば、車です。太陽光と合わせて、法人名義で「社有車」として買えば、自動車でも消費税還付ができます。最近ではAnycaという、自家用車のシェアリングサービスがあります。車も稼ぐ資産に化けます。
交通費や図書研修費、交際費など、合理的に費用処理できる幅も広いです。
✔︎ベストシナリオ#3 バレない副業
あと、バレない!!!これは重要です。
法人名義で副業をすれば、(住所の問題は解決するとして)勤め先にバレません。
信用力もありますし、お金に加えて経験も蓄積できます。結果、自分のしたいことを規模拡大できます。
個人の場合、したいことができないです。したいことをして、お金が生じた瞬間、副業なりかねません。継続性を自ら断つことになります。それ以前に、たぶん、短絡的な趣味しか考えられない人生になります。こんな人生、つまらないですよね。
✓ベストシナリオ#4 出口戦略
出口戦略と書いて、「人生の価値」だと思います。
どんな事業も、廃業か売却かを決める時がきます。サラリーマンにはそんな感覚はないですが、自分の退職を思えば、廃業しかない人生です。どんなにサラリーマンとして貢献しても、退職したら、凡人です。その知識と経験はどこにも活かせません。健康なら駐車場のガードマンぐらいは務まりますが、その期間の長さはサラリーマン人生より長いものです。廃業しかないキャリア設計にはゾッとするばかりです。
ところが、サラリーマンでも、ストックオプションとかで株をもらう人は別格です。配当金収入がありますし、愛社精神も保てます。出口戦略として、売却も相続もできます。努力が形を変えて残るのです。
太陽光は減価償却が終われば、簿価1円の営業資産として、5年間は9%の投資利回りを発揮します。
今はまだサラリーマンには「平凡」を強いる時代ですが、いつか個人資産を法人に集約したいと思います。